アンプデ−タ

広帯域AMP

1.プリ・ドライブ回路
2.終段パワーアンプ回路
3.2SC1970を使った広帯域パワー・アンプ
3.ICを使った広帯域パワー・アンプ
4.MOS-FETを使ったパワー・アンプ1
5.MOS-FETを使ったパワー・アンプ2

最近よく使われ出したトロイダル・コアなどによって、広帯域化したパワ−アンプを制作しました。

ワイドバンド・パワ−アンプに要求される条件とは、

1.広帯域特性を有すること
2.安定動作であること
3.いかなる使用条件においても壊れにくいこと
4.ゲインが大きいこと
5.回路が簡単なこと
6.特殊な部品を一切使用しないこと

プリ・ドライブ回路

小信号増幅部の回路は、出力電力で+10dBmぐらいの電力があれば、だいたいの回路に接続して使用できます。
しかし、プリ・ドライブ回路ともなると、今度はパワー・ゲインが問題になってきます。
このパワー・ゲインだけは、回路をどのようにしても良くはなりません。
一番パワー・ゲインに関係するものは、そこに使われる増幅素子、つまりトランジスタというわけです。
そこで、トランジスタ規格表をずっと見まわして選んだトランジスタが、2SC1973です。
このトランジスタは、相当なパワー・ゲインが期待できそうで、50MHzにおいて30mW入力時に、出力1Wというものすごさです。
本器のプリ・ドライブ用トランジスタとしては,もってこいのものです。
このトランジスタを使用して、先ほどの小信号増幅回路とともにテストしてみることにました。
そのテストに際しての回路図を、図1-1に示しておきます。


図1-1

このプリ・ドライブ回路には、電流型と電圧型の帰還をかけて少しでも周波数特性の改善を図っています。
やはり思った通り、小信号増幅回路とは違って、周波数特性がシビアに現れて出力されているようです。
しかし、このままの回路でも1Wの出力を出す性能があります。
このプリ・ドライバの様子を、写真1-1に示します。


写真1-1

終段パワーアンプ回路

2石だけのアンプで1W強得られることがわかりました。
そうなると、プリ・ドライバとしてではなく、終投のドライブ用として十分な能力が期待できますから、プリ・ドライブ回路としてではなく、ドライブ回路として使うこ とにします。
終段パワーアンプですが、とにかく周波数帯域を伸ばさなければなりませんので、144MHz帯で使用されているトランジスタの中から、パワーゲインの大きい ものを選択することにします。 ちなみにこのパワートランジスタは、144MHzにおいて600mW入力時に7Wの出力が期待できるトランジスタです。
さて、このトランジスタをパワー段に使用するとなれば、前段までの回路ゲインが多すぎますので、多少回路を変更することにします。
変更といっても回路定数の変更ですが、周波数特性の良くなるほうへ変えたいと思います。
そのようにすることができるのも、回路の持つパワーゲインの余裕です。
そして、でき上がった回路が、図1-2に示す本器の全回路図です。


図1-2

回路図を見ると、前まで説明してきたものとほとんど同じですが、前投のゲインは多少おさえて周波数特性改善のために、もう少し負帰還を深くかけるようにしていま す。
終段のベース・バイアス用に入れてあるデイオード1S1588は、終段トランジスタ2SC1971にしっかりと熱結合させるように、組み立ての際には注意しをください。
この回路の全体的な組み立ては、やはりプリント基板の銅はく面だけをアース・パターンとして使用し、全ての部品は立体配線によって組み立てます。
言うまでもなく、終段側のトランジスタは放熱器に取り付けられるように、プリント基板をトランジスタの寸法に合わせてカットしておきます。
また部品間の配線には、ランド板といってプリント基板を必要なサイズに切断したものを、ポンドなどでプリント基板側に接着して利用すると、立体配線も楽に作業が進 みます。
そのようにして組み立て終えた本器の様子を、写真1-2に示します。


写真1-2

  製作

本器の場合、立体配線によって行っておりますので、部品さえ揃えば後は調整作業兼製作のようなものです。
製作に当っての注意は、とにかく全体的な回路の持つパワーゲインが大きいので、ラフに製作したのでは、まず発振するでしょう。
立体配線ですから、トランジスタのコレタタとベースは、十分注意して配置を行ってください。
また、あまり小さく組みすぎると、これまた発振してしまいます。
ある程度の大きさに組み立てた場合、一番問題になるのが、終段トランジスタを冷やす放熱器の問題です。私は、アルミのコの字型の中にすっぽりと回路を収納するよう なかっこうで作りました。 これで、シールド効果と放熱効果の2つをねらって使用しています。
ただ、単に放熱器としてだけ見ると、だいぶ大きすぎたようです。
全てを組み終えて、何とか動作するようなかたちまで来たら、今度は調整作業に取りかかりましょう。

調整

本器の場合、調整といってもコイルを回すわけでもないし、トリマ・コンデンサが付いているわけでもないので、調整らしい調整は必要ありません。
しかし、調整はともかく点検はしなくてはなりません。
まず、各トランジスタのId(アイドリング・コレクタ電流)の値を、回路図に示してある値と照し合わせてみます。
1段目の2SC1907のIdは,約25mAです。
2段目の2SC1973のIdは.約30mAです。
3段目のパワ−アンプ部の2SC1971のIdは、約30mAです。
これよりももし極端に多い場合いは、すぐ電源を切ってください。
どこかでショートしている可能性があります。
また、トランジスタのバラツキにより、若干の電流の増減はあるかもしれません。
その場合は、回路図中の各トランジスタのベースに接続されている、抵抗Rbと示した抵抗値を増減してみてください。
特にバラツキの多いトランジスタは、終投のトランジスタ2SCl971です。
また、この終投トランジスタは一瞬のうちに壊れてしまいますから、十分注意してください。 でき上がった本器の周波数対出力電力特性図を、図1-3に示しておきます。


図1-3

写真1-2では50MHz−10dBmの入力時に、出力6W強の状態を示しています。
調整というより点検ですが、コイルの接続ミスなどが十分考え久れますので、1つずつ確認してから電源を入れるようにしてぐださい。
それと、入力側に接続する信号は、必ず10dBぐらいのアッテネ−タを接続して行ってください。
本器のパワー・ゲインが高いため急に大きな信号を入力することは避けたほうが無難です。
ちなみに、本器の入力信号の代わりにグリッド・ディップ・メータの信号を,1ターン・コイルを介して接続しても、その入力信号の強さは大きすぎるぐらいなのです。 全体的な組み立てを一度にやってしまうのではなく、1段ずつ調整し、測定しながら製作していくのも1つの方法です。
むしろ、この方法で組み立てたほうが、失敗する確率は少なくなるでしょう。

2SC1970を使った広帯域パワー・アンプ


図2-1

図2−1は、2SC1970を使った周波数1M〜50MHz、出力1W程度の広帯域パワー・アンプです。


写真2-1

製作例を写真2-1に示します。入出力はトロイタル・コイルによる広帯械トランスを使用して、インピーダンスを変換しています。
トロイタル・コアはフェライト・コア系のFTタイプです。
2SC1970は、170MHz帯用のパワー・トランジスタなので、VHF帯までの広帯域増幅が期待できます。
なお、電力利得が高いので、発振には十分注意を払います。
回路図中では、カップリング・コンデンサやパスコンは、2−3個並列にしてインピーダンスを下げると同時に、電流の流れる通路を広くとるようにしておきます。
また、バイアス用ダイオードの1S1558と2SC1970は、熱結合するようにしておきます。
調整箇所は、アイドリング電流で、およそ30mAになるようにベース・バイアス調整用VR1(500Ω)でセットします。
図2−2は、回路の周波数特性です。入力を20mW一定にして周波数を変化したときの出力電力は、1M〜50MHzまで、ほぼ1Wでした。
30MHz付近に出力増加の山があるのは、分布容量等と共振しているものと思われます。


図2-1

uPC1677を使った広帯域パワー・アンプ


図4-1

図4-1は等価回路とPIN配置図です。 uPC1677Cは中出力のシリコン・モノリシックICです。
1GHzで+17dBm出力ガ可能です。


図4-2

接続はLとCのみである。(図4-2)たったこれだけで、今までの回路と同様な出力が得られてします。 プリドライブどしてはもってこいのICでしょう。 図4-2より100MHzでは+3dB入力時20dBmの出力が得られます。
このICは5V動作で、簡単に100mWが得られるため、非常に便利です。
しかしこのICの特徴として、入力側のリタ−ンロスが非常によいが、出力側が悪いので対策が必要かもしれない。
出力GND間に75Ωをつけると出力は落ちてしまうが、その分、マッチングは取れて、スプリアスもげんしょうした。


図4-3

MOS-FETを使ったパワー・アンプ1


図5-1

図5-1はMOS-FET、2SK408を使ったアンプです。FETは熱暴走の危険が少なく、回路が簡単です。
しかし、ドレイン電圧が80Vと高いので、制作には、感電の注意が必要です。


図5-2

図5-2が回路図です。
調整方法は、Vccに電圧をかけずに、Vgsが1.9VになるようVR1を調整する。
Vccに80Vかける。
Idqが50mA程度流れていることを確認する。
出力に終端電圧計をつなぐ。 100mW入力する。
入出力のコイル、トリマを調整して、出力が最高になるようにする。
出力10W程度で電流200-300mA程度であることを確認する。


図5-3

図5-3は、実験の様子です。
入力15dBmで出力5Wを示している。電流は140mA。
MOS-FETを使ったパワー・アンプ2


図6-1

図6-1はMOS-FET、2SK410を使ったアンプです。10W入力で100W以上の出力が得られます。
これもドレイン電圧が80Vと高いので、制作には、感電の注意が必要です。


図6-2

図6-2が回路図です。
調整方法は、Vccに電圧をかけずに、Vgsが1.8VになるようVR1を調整する。
Vccに80Vかける。
Idqが50mA程度流れていることを確認する。
出力に終端電圧計をつなぐ。 5W程度入力する。
入出力のコイル、トリマを調整して、出力が最高になるようにする。
出力100W程度で電流2.2A程度であることを確認する。


図6-3

図6-3は、実験の様子です。
出力110Wを示している。