最高のFM送信機を作ろう!

1.ステレオ変調器
2.発信器
3.PLL
4.アンプ

1.ステレオ変調器

 ステレオ変調は和差方式と時分割方式がありますが、時分割方式(38KHzでLとRをスイッチングする)を使用することにします。
市販のICではJRCの
NJM2035Dとロ−ムのBA1404が存在します。
ステレオ変調器で大切なのは、セパレ−ション(分離度)とキャリアもれです。
セパレ−ションが悪いとステレオの立体感がなくなります。つまり右と左が混ざってしまうことになります。
キャリア漏れとは、スイッチングしたときに発生する、LとRの電位差です。
この電位差が無信号時にノイズとなってあらわれます。
今回はロ−ムのICを使います。ロ−ムの方がセパレ−ションが5dB程良いようです。
このICは発信変調部も備えてありますが、ステレオ変調部だけを使用します。


BA1404のブロック図

キャリア漏れ(MPX−BALANCE)、未調整時の14番ピンの出力。


キャリア漏れ


キャリア漏れ調整後

ステレオ放送とモノラル放送を区別するために、パイロット信号(19KHz)といわれる、識別信号を送信します。
この信号は13番ピン(PIROT−OUT)から出力されています。
しかし、矩形波なのでこのまま変調すると、多くの高調波(スプリアス)を含んだままとなってしまい、セパレションの悪化を招きます。
そこで19KHzのバンドパスフィルタを通すことにします。


13番ピン(PIROT−OUT)の信号


19KHzのバンドパスフィルタを通した信号

14番ピン(MPX−OUT)からの出力信号は、多くの高調波を含んでいます。
そこでロ−パスフィルタを通すことにします。


14番ピン(MPX−OUT)からの出力信号


ロ−パスフィルタを通した信号

この2つの信号はミックスされ、コンポジット信号になります。


コンポジット信号。とび出ているのが、パイロット信号


できあがったステレオ変調基板

2.VCO

 VCOで大事なのは、変調をかけたときに問題となる直線性、位相ノイズでしょう。 今回は、均一で深い変調がかけられるよう、直線性にこだわってみました。 次に今回使用したVCOの特性を示します。

VCOの直線性、Δf=6.2MHzこの値は後でPLLの計算に使用します。


VCOの高調波特性


VCOのSSB位相ノイズ


3.PLL

設計の仕様

発信周波数範囲   :76.0〜89.9MHz
比較周波数     :25KHz
セットリングタイム :350ms10%のオーバーシュート
最大オーバーシュート:20%
素子の決定

1.f・REF=0.025MHz
2.N・MAX=89.9/0.025=3596
N・MIN=76.0/0.025=3040
3.ラグリ−ドフィルタ使用時のインデンシャル応答特性よりダンピングファクタを0.8とすれば、オ−バ−シュ−トが20%いかになる。
4.ωts=3.5で過渡応答性が10%以下になる。350mSのセットリングタイムを得るためには
5.VCO(Kυ=2・π・6.2・1000000rad/s/υ)に、位相比較器(Kφ=0.4V/rad)を使用、C=100μFとすると

PLLの章で書いたように計算すると。

R1=430K
R2=1.5k

以上がル−プフィルタの定数になります。

アンプ

アンプはパワ−アンプの章で書いたアンプを使用します。
図4-1

図4-1は等価回路とPIN配置図です。 uPC1677Cは中出力のシリコン・モノリシックICです。
1GHzで+17dBm出力ガ可能です。


図4-2

接続はLとCのみである。(図4-2)たったこれだけで、今までの回路と同様な出力が得られてします。 プリドライブどしてはもってこいのICでしょう。 図4-2より100MHzでは+3dB入力時20dBmの出力が得られます。
このICは5V動作で、簡単に100mWが得られるため、非常に便利です。
しかしこのICの特徴として、入力側のリタ−ンロスが非常によい(30dB以上)が、出力側が悪いので(5dB)対策が必要かもしれない。


利得(22dB)とリタ−ンロス(33dB VSWRにして1.05程度)


出力側リタ−ンロス


出力側スミスチャ−ト

出力GND間に75Ωをつけると利得は落ちてしまう(19dB)が、その分、マッチングは取れる。


調整後出力側リタ−ンロス(28-30dB)


調整後出力側スミスチャ−ト

次に本機のスぺクトラムを示します。


基本波に対し2次高調波は-8dBと、かなりのスプリアスを含んでいる。広帯域アンプの宿命。


基本波の無変調時のスぺクトラム。38KHzのスイッチングが-30dB程度のっている。出力17.9dBm(約60mW)

広帯域アンプは見てのとうり同調回路がありません。
この後には、フィルタ−を入れた方がいいでしょう。


できあがった送信部