ステレオ変調は和差方式と時分割方式がありますが、時分割方式(38KHzでLとRをスイッチングする)を使用することにします。
市販のICではJRCのNJM2035Dとロ−ムのBA1404が存在します。
ステレオ変調器で大切なのは、セパレ−ション(分離度)とキャリアもれです。
セパレ−ションが悪いとステレオの立体感がなくなります。つまり右と左が混ざってしまうことになります。
キャリア漏れとは、スイッチングしたときに発生する、LとRの電位差です。
この電位差が無信号時にノイズとなってあらわれます。
今回はロ−ムのICを使います。ロ−ムの方がセパレ−ションが5dB程良いようです。
このICは発信変調部も備えてありますが、ステレオ変調部だけを使用します。
BA1404のブロック図
キャリア漏れ(MPX−BALANCE)、未調整時の14番ピンの出力。
キャリア漏れ
キャリア漏れ調整後
ステレオ放送とモノラル放送を区別するために、パイロット信号(19KHz)といわれる、識別信号を送信します。
この信号は13番ピン(PIROT−OUT)から出力されています。
しかし、矩形波なのでこのまま変調すると、多くの高調波(スプリアス)を含んだままとなってしまい、セパレションの悪化を招きます。
そこで19KHzのバンドパスフィルタを通すことにします。
13番ピン(PIROT−OUT)の信号
19KHzのバンドパスフィルタを通した信号
14番ピン(MPX−OUT)からの出力信号は、多くの高調波を含んでいます。
そこでロ−パスフィルタを通すことにします。
14番ピン(MPX−OUT)からの出力信号
ロ−パスフィルタを通した信号
この2つの信号はミックスされ、コンポジット信号になります。
コンポジット信号。とび出ているのが、パイロット信号
できあがったステレオ変調基板
VCOで大事なのは、変調をかけたときに問題となる直線性、位相ノイズでしょう。 今回は、均一で深い変調がかけられるよう、直線性にこだわってみました。 次に今回使用したVCOの特性を示します。
VCOの直線性、Δf=6.2MHzこの値は後でPLLの計算に使用します。
発信周波数範囲 :76.0〜89.9MHz
比較周波数 :25KHz
セットリングタイム :350ms10%のオーバーシュート
最大オーバーシュート:20%
素子の決定
アンプはパワ−アンプの章で書いたアンプを使用します。
図4-1
図4-1は等価回路とPIN配置図です。 uPC1677Cは中出力のシリコン・モノリシックICです。
1GHzで+17dBm出力ガ可能です。
図4-2
接続はLとCのみである。(図4-2)たったこれだけで、今までの回路と同様な出力が得られてします。
プリドライブどしてはもってこいのICでしょう。
図4-2より100MHzでは+3dB入力時20dBmの出力が得られます。
このICは5V動作で、簡単に100mWが得られるため、非常に便利です。
しかしこのICの特徴として、入力側のリタ−ンロスが非常によい(30dB以上)が、出力側が悪いので(5dB)対策が必要かもしれない。
利得(22dB)とリタ−ンロス(33dB VSWRにして1.05程度)
出力側リタ−ンロス
出力側スミスチャ−ト
出力GND間に75Ωをつけると利得は落ちてしまう(19dB)が、その分、マッチングは取れる。
調整後出力側リタ−ンロス(28-30dB)
調整後出力側スミスチャ−ト
次に本機のスぺクトラムを示します。
基本波に対し2次高調波は-8dBと、かなりのスプリアスを含んでいる。広帯域アンプの宿命。
基本波の無変調時のスぺクトラム。38KHzのスイッチングが-30dB程度のっている。出力17.9dBm(約60mW)
広帯域アンプは見てのとうり同調回路がありません。
この後には、フィルタ−を入れた方がいいでしょう。
できあがった送信部